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人狼議事 CabalaCafe96 偽りの夜空

偽りの夜空wiki

2011/4/21〜5/12



それは楽しいはずのクルーズ旅行。
新しい出会いがあって、これから寄港する国々に思いを馳せて…。
しかしそれは、『現実』ではなかった――。


***


ここは地球から離れた、宇宙空間。
人類は宇宙に出た時から、長く正体の掴めない『敵』の存在に苦しめられ続けてきた。
そんな折、とある計画が立てられる。契機となったのは、敵に対峙できる「細菌」の発見。

幾度かの実験を繰り返した後、実現したのは「人体実験」。
コールドスリープの状態を保つことで、体内で抗体を作ろうとした。
実験中は、被験者は絶対に目覚めてはならない。目覚めさせてはならない。

そこで考え出されたのが、『夢』を見せる装置。『精神安定装置(スタビライザー)』であった。
旧人類世界の夢を見せ、その中であたかも生活しているように「錯覚」させる装置だ。

計画は上手くいっているハズだった。
しかし、唐突に。異常を知らせる音が管制室に鳴り響く。


『敵の侵入ヲ確認致しましタ』


合成音声が、そう告げてくる。管制室にいる作業員に、緊張が走る――


***


ここは「Espoirエスポワール」と呼ばれる大型宇宙船の中心部――管制室である。
人工の青白い照明に包まれた空間には、研究者達が数名。
あちこちで慌ただしく動いていた。

彼らは今日も、実験のデータを纏める作業に従事していた。経過は良好。
このまま平穏に月日が過ぎればと、そんな期待を裏切るかのように静寂を破ったのは、
ディスプレイに表示される「warning」の文字と、響き渡る警告音だった。

現場でチームの指揮を執っているのは「キリシマ」と呼ばれる男。
スタビライザーの設計にも携わった技術者だ。
鳴ってはいけない警告音に、彼の表情は険しさを見せ、それぞれに指示を与える口調には苛立ちが見て取れる。


 「スリーパー達の現在の様子を、今すぐモニターに映し出せっ!
 前日までのデータも全て解析に回すように。この実験は何としても成功させなければ…っ」


コールドスリープ状態にある、実験の被験者達は“最後の希望”と称される。
長年かかってようやく発見された細菌は、「ナイトメア」と呼ばれる敵の、いかなる干渉をも受けない性質を持っていた。
これを応用し、人体で培養させることが実験の目的。
被験者達が途中で目覚めてしまえば、血清を作るのに十分な量が手に入らない。
そのため、精神安定装置スタビライザーによって、彼らは管理されていた。

夢を見ている間は、絶対に目覚める事は無い。
宇宙空間での記憶も実験に参加していて眠らされていることも、それらの記憶は、眠りについた時に書き換えられるからだ。

キリシマの怒声が響く中、中央のメインモニターに映像が映し出せれていく。
普段使われる事の無いそれに、スリーパー達が見ている夢の世界が次々と。

一見不審点は見当たらない。だが、長く監視を続ける内に妙な事に気付く。
彼らの向かう先が、まるで引き寄せられるように、とある客船に集められていたのだった――


***


― 観光クルーズ 乗り場 ―

乗り場から見えるのは、Le Reve des Etoilesル・レーブ・デ・ゼトワール――星の夢と名付けられた、白く大きなクルーズ。
この船は数日をかけて、イタリア・フランス・スペイン、と地中海を旅する予定。

船のパンフレットには、こう書かれていた。



“Le Reve des Etoilesはバルセロナを出港し、南ヨーロッパやイタリアの主要都市の他、シチリア島、マヨルカ島を巡る、優雅な観光クルーズです。船内のインテリアにもこだわり、真珠やチーク材などの天然素材を多様した造りとなっております。ショーラウンジにダイニング、24時間オープンのカフェテリアや展望レストラン、カジノやシアターも完備してございます。
 
優雅な旅のひと時を、お楽しみくださいませ”



そして、これが夢の世界であるとは知らないスリーパー達が、この船旅を楽しまんと集まり始めた――
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