――本当の歴史を知りたいとは思わない?――


誰が広めたかは分からないが、世界の全てが記された書があると、人々の間でうわさになっていた。
それを手にした者は、万物を統治する事が出来る、とも。

とある国の王から勅命を賜った**は、十数名で編成された部隊を引き連れて、本当に実在するかどうかも怪しげな本を探す旅を強いられていた。
王が本当にそれを欲しているのか、はたまた**を体よく厄介払いしたかったのか、真偽は定かではないが…。
忠信に厚い彼は、神話の時代に存在したという建物を目指し、砂漠の中をひたすら歩き続けた。

過酷な環境の中で、部隊を離れる者が一人…また一人と増えてゆき、ついには彼を含め片手ほどしか残らなかった。
命じられた物を見つけられなければ、帰ったところで居場所がなくなるだけ。
かと言って、このまま彷徨い続けても先が無い事は理解していた。

「……俺は一体、何を探してるんだろうナァ。」

己を嘲笑うように洩らした一言は、足元の砂を抉るように巻き上げる突風と共に消えた。


 * * *


砂嵐に巻き込まれた一団は思わずその場にうずくまり、風が通り過ぎるのをじっと待っていた。
再び目を開けた時、彼らは信じがたい光景を目の当たりにする。

足元の砂の感触はなくなり、どこまでも続いていた砂の海も消えている。
そして独特の古めかしい古書の香り。
放心状態で立ち上がると、どこからともなく声が聞こえた。


――バベルの大図書館へようこそ。探し物はここに――


くすくすと笑いながら囁く声は、決して心地よいものではない。

「……、ははっ、俺ァ夢でも見てんのか?
 それとも、ここが死後の世界ってやつだったりしてな。」

異邦者は館内の誰かの手引きにより、人知れずひっそりと地下の書庫に現れた。
携帯している武器の金属音を響かせながら辺りを彷徨う一行が、誰かに見つかるのは時間の問題だろう。

世界のあらゆる記録を保管している図書館にとって、異邦者の訪れは凶兆の知らせ。
外の人間が、収蔵されている本に触れたなら、正しくあるべき歴史が変わってしまうかもしれない。
それ故に、この大図書館は人々の目から隠されてきたのだ。


 * * *


いつまでも続くと思われた安寧は突然の来客により崩された。
世界の規律を乱そうと企む誰かが、本を通して外の世界に介入し、異邦者をこの場所へと呼び込んだのだ。

事件を引き起こした元凶は、この大図書館で生まれ、その一生をかけて本を管理する司書達の中に居るはずだ。
この忌むべきバグの存在が確認された時点で、それを廃棄しなければならないのだが……



◆世界観メモ (前作とほぼ同じ)

・図書館内の家具や備品などは中世風
・ややSF風味
・司書の手の甲には制御端末が埋め込まれており、これによって意思の統制が図られている。
・彼らは「ラボ」と呼ばれる施設で作られている。
・1人が欠ける毎に、新たな司書を補充しています。(常に一定の人数しかいない。何人いるかは謎…)
・端末にエラーが起きた場合、行動や感情のコントロールが出来なくなる者がいる。これを「バグ」と呼ぶ。
・「バグ」が発生したら、司書の修復は不可能。(と考えられている)
・図書館の運営に影響を及ぼす危険があるため、「バグ」と判断された司書は「廃棄」しなければならない。
・司書の他に、書記・翻訳者・研究員・分析官も居るが、彼らも同じように統制されている。
・館長は存在しない(とされている)


■その他メモ

・前作とは時間軸が異なる。(前回の登場人物はここには居ない)
・異邦者の証言により、司書たちの勤務時間帯から容疑者が絞り込まれます。(容疑者=地上参加者)
・犯人は、とある国の王に声が届くように、その時代に関する歴史書に手を加えています。(世界を書き換える本の存在を仄めかす噂話が蔓延する、等の一文を加えた)
・見学参加の場合は、迷い込んできた部隊の中の一人という扱い。(隊長=村建てNPC)
・「司書」「翻訳者」「書記」の他に、「研究員」「分析官」の役職をプラス。

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